チームに必要なこと[1]

ごあいさつ

西広島リハビリテーション病院
病院長
岡本 隆嗣
はじめまして!このブログは患者さん、ご家族の方、一般の方、そして職員にも、 当病院のことをもっと身近に感じていただきたいという思いで作りました。 日々の出来事の中で私が思ったことをつづっていきたいと思います。
私は大学の時に、アメリカンフットボールをやっていました。アメリカンフットボールは日本ではマイナーなスポーツで、みなさんほとんど知らないと思いますが、こんなふうに陣形を組みます(右図参照)。一番前には、「ラインメン」と呼ばれる、前の相手をブロックして走る道を作る人がいます。「ランニングバック」は開けてもらった道を走る人。「ワイドレシーバー」が球を取る人。「クォーターバック」は、チームの司令塔で、ボールを投げても走ってもいい人です。ちなみに、私はラインメンをやっていました。

医療のチームを考えた時に、野球とかサッカーよりもアメフトのチームが一番似てるんじゃないかなと思います。ラグビーもサッカーも、ポジションは決まっていますが、まあ何をやってもいいというか、できることは大体一緒です。でもアメリカンフットボールはポジションごとにできることが決まっていて、クォーターバックという、作戦を考えて、投げるか走るか決めるリーダーがいて、それぞれの専門職がいて、練習もポジションごとに全然違います。走る人は走る仕事しかやらないし、取る人は取る仕事ばっかり。つまり、チームで言う分業をしています。1人ではできない仕事をやるために、2人3人とチームを組んでやる。その時に役割分担をして、さらにそれぞれの人間をまとめる、分業と協業の中にリーダーシップが必要なんです。こんな風に、非常に医療のチームに似ているな、と思います。

今の医療でチームに必要な要素をいろいろ考えた時に、毎年新人に話しているのが、この5つです。
1人1人が全然違う仕事をするから、「[2]専門性」が生まれて、深く技術を身に着けることができる。これはやっぱり必要な事なんだろうと思うんですよね。みんなが同じことをやっていたら、そんなに深く1つのことって掘れないと思います。そして、こういう専門職がお互いに「[3]情報共有」を行うために必要なのが、「[1]共通言語・共通知識」です。これがないと会話ができないんです。全員に共通して必要な基礎と言えます。アメリカンフットボールで言うと”ダッシュ”と”ブロック”にあたり、それぞれのポジションごとの練習の前後に、毎回必ず全員で練習していました。
朋和会では、すべての職種の共通言語となる略語を選定してまとめています。先日職員に「略語テスト」をやってもらったんですが、それはこの中の「[1]共通言語・共通知識」が、チームに必要な要素だからです。何のために略語テストをやったかというと、「あなたはチームにいる資格がありますか?」「ちゃんとチームに必要な要件を、あなたは満たしていますか?」という問いかけのためです。厳しいかもしれないけど、普段私達が使っている最低限の共通言語をテストしたわけですから、100点が当たり前。分からないっていうことは、普段病棟で飛び交っている言葉が理解できていないということですからね。そういうことを、ちゃんと上司が部下に伝えて教育しているかというのは大事なことで、すごく良いきっかけだったと思います。頑張った職員もたくさんいたっていうのは嬉しかったですし、いい結果が出なかった職員さんは次回リベンジして欲しいと思います。チームの力というのは全員の力の合計ではなく、全員に共通する基礎力の幅を言うのではないでしょうか。
また、コミュニケーションを取る上ですごく大事なのが、「[4]相互理解(お互いのことを知ること)」。これは、「お互いの仕事を知ること」と言ってもいいかもしれません。私もよく病棟の看護師さんに声をかけると、「後にしてください」って言われたりすることがあるんです。看護師さんに何かを伝える時、例えば薬を確認したりしている時に、自分が今言いたいからということで言っても、うまく伝わらないですよね。今この時間だったら空いているから、この時間にちょっとしゃべろうとか。相手の仕事をよく知っていないとできないことなんです。後は若い人とかベテランの人とか、相手によって話し方を変えるじゃないですか。相手のキャラクターも含めて相手のことをよく知っていないとできない、いわゆる配慮することができません。これはすごく大事なことだと思います。
そして、それを最後にまとめる「[5]リーダーシップ」。私はアメフト部でキャプテンをやっていたんですけど、チームに何が必要かといったときに、ルールや戦略などのアメフトの共通知識はもちろん必要だし、専門性も必要です。けれど、やっぱりリーダーが中心になって普段からコミュニケーションをしっかりとっていないと、チームってまとまらないんですよね。チームの方向性と目標を示し、それをまとめるリーダーシップが必要だというのは、私はアメリカンフットボールから学んだことなんです。