三つ子の魂

新聞で、読者から寄せられた「三つ子の魂 百まで」の実例紹介を見つけました。
「そうだ!言葉のデイケアの皆さんも、きっと例を思い当たるに違いない」と思いました。
そこで、話していただくテーマとして取り上げました。

手がかりとして、ボードに下図のように書いて説明しました。
「自分のことでも、家族や知り合いのことでも、食べ物や場所、運動や活動、人、その他で、
小さい頃に好きだったか、嫌いだったか、大人になってからも変わらないものを話してください。」

スタッフが先ず話しました。
「2~3歳の頃、汽車を見るのが大好きで、毎日母にせがんで線路が見える土手に連れて
行ってもらい、半日を過ごしました。今は列車に乗るのが好きでたまりません。」

思い出していただくための時間を2~3分置くと、Aさんが待ちかねたという表情です。
「子どもの頃、母が作ったおはぎと柏餅が大好物だった。就職して家を離れてからも、
帰省すると母が必ず作ってくれた。母が亡くなった今は時々買っては食べる。」

隣のBさんも話したいことが決まったという表情です。
「毎日、夕方暗くなるまで近所の子たちと夢中で遊んでいました。
あれが自分を育ててくれたように思う。今の子供たちは可哀そう…」その話を聞いて、
Bさんが先週「子どもの頃、人数が少なかったからベース3つの野球をやった。
バットも無いから木の枝を使った。何でも工夫しましたよ」と語っておられたのと
結びつきました。

最初に発言することが多いCさんですが、最近控えめになっています。
CさんにAさんが目で促しました。
「家族全員がカープを応援している家で育ったから私もカープファン。今はカープが
負けると体調が悪くなるほどです。」

Dさんは、じっと発言の順番を待ってくれていた様子です。
「小学校の1年と2年で担任だった先生が大好きだった。クラスの他の子たちも皆、
その先生が好きだった。」
「その先生のどんなところが好きだったのですか?」
「何もかも全部。大人になって入院していた時、病院のテレビ画面でその先生を
見つけた。すぐにはわからなかったけれど見ているうちに、ああ、あの先生だ!と。」

Eさんは、これまでの4人の話を身を乗り出し気味に聞いていましたが、
最初の発言者のAさんを指し「私もあれが・・・柏餅が好きだった。
今も買って食べる。餡に2種類あって、小豆と・・・」
あとの1種類は何だろうと皆が思いつく餡をいくつか言いましたが、
「そう、それ!」の声を聞けないまま時間となってしまいました。
でも、柏餅の季節が目前です。Eさんは必ず買って食べながら餡を思い出されるでしょう。
タイミングを逃さずに、もう一度柏餅を話題にしてみようと思います。