新年が始まって以来、 能登半島の被災地の人々の様子がテレビ画面に映るのを見ては、気持ちが萎える日々です。
しかし、このような時こそ、うつむいてばかりいないで空を見上げることも大切です。

江戸時代に凧揚げの風習が生まれた謂れ(いわれ) のひとつは「立春の季に空を向くは養生のひとつ」といいますから、
新春のグループリハビリは「凧揚げ」で始めることにしました。
ご利用者6人、 スタッフ1人、 ボランティア1人 (言語障害についての知識を身につけた方。定期的参加) の合計8人に
司会者がまず 「凧揚げ経験のある方は?」と問いかけました。
ご利用者のひとり「見たことはある (揚げたことはない)」以外の7人は、「体験あり」でした。
スタッフが「私はゲイラカイトというのを揚げました!」と言うのに皆さん 「?」 「?」 「?」・・・。
知らないのは世代差、ということにして先に進みます。

司会者が「たこの歌」 (たこたこ あがれ 風よくうけて 雲まであがれ 天まであがれ・・・)を紹介すると、
こちらは全員なじみがあった様子でした。
歌詞の一部を借りて、全員で「あがれあがれ 天まであがれ」と元気に声を合わせてから、ゲーム開始です。
「自分の揚げる凧に書いてあってほしい文字を、次の12個の漢字から、一つ選んで下さい」

6人の皆さん、時間をかけずにおのおの一文字を選ばれました (楽、躍、 昇、 望、大、大)。
でも、この一文字で決まり、ではありません。

「次に、スタッフとV (ボランティア) さん、 皆さんが選んだ漢字に自由に何か一文字を加えて熟語を作って下さい。
その熟語の書かれた凧を揚げることにします。」

いちばん端の席で「楽」 を選んだAさんのお顔をスタッフが笑顔で見ながら
「Aさん、今年は『楽勝』の年にしましょう!」
隣のBさんは「躍」を選んでおられます。スタッフは今度も迷わず「Bさんには『飛躍』 が合いますね!」
次はCさんの凧です。「Cさんは辰年生まれと聞いたので『昇龍』がぴったりですね!」
Cさんは嬉しそうにうなずかれました。
先ほどから思案顔だったVさんが「Dさんの『望』は『大望』でどうでしょうか。」
いつも控え目で優しい表情のDさんは、ここでも微笑みながらうなずかれました。
次のEさんの選んだ「大」にはスタッフが勢い込んで「Eさんは『大吉』ですね!」Eさんは初詣を欠かさない方です。
隣のFさんも「大」を選んでいました。
Vさんが「Fさんはカープを熱烈に応援しているお話を何度も会話グループで聴いているので『大ファン』でどうでしょう?」
Fさんはカープが勝った時のようなお顔になりました。

凧に書く言葉が、これで全部決まったところでしたが、Vさんが「あの~、Dさんには『大望』より『希望』の方が合うような気がしてきました。」
司会者が「Dさん、どちらがよいですか?」 Dさんは迷うことなく「希望」を選び、DさんとVさんの二人ともに満足の表情で落ち着かれました。

この凧作りのように御利用者とスタッフ、ボランティアが力を合わせて、言葉のデイケアを今年も豊かな体験の時間にしてゆきたいと思います。