病院紹介
神経学的音楽療法
当院では、リハビリテーションの一環として、2011年5月より音楽療法士による音楽療法を導入しています。
音楽療法とは
音楽を聴いて癒されたり、楽しい気持ちになったりすることはないでしょうか。 音楽療法は、下記のような音楽の力を意図的・計画的に使用して、心身の障害を回復したり、機能の維持改善に役立てる治療法です。
対象となる方
当院で行っているのは、主に「神経学的音楽療法」というもので、脳血管疾患(脳出血・脳梗塞・頭部外傷)の患者さんが対象です。
入院時に評価を行い、効果があると考えられる方(脳血管疾患による意識障害・失語症・半側空間無視・注意機能障害・歩行障害、パーキンソン病)、ご要望をいただいた方に対して行います。患者さんごとに状態を評価し、治療方針と目標を設定します。その方の身体状況によって、多職種との共同訓練か音楽療法単独の訓練を、1回約20分間・週に約4回行います。(現在は、感染対応のため、週1~2回、時間は20~40分患者さんの状態に応じて設定しています。)
訓練内容
神経学的音楽療法は、認知領域、感覚運動領域、発話・言語領域に働きかけるものがあり、それぞれの領域についてさまざまな訓練方法があります。
認知領域
覚醒訓練(Musical Sensory Orientation Training = MSOT)
音楽を刺激として用いることで覚醒させ、注意を向けるようにする訓練です。意識障害のある方に対して行い、コミュニケーションやリハビリにつなげていきます。
音楽による半側空間無視訓練(Musical Neglect Training = MNT)
脳の障害により左側に注意を向けることが困難になった方に対して行います。患者さんの目の前の空間に楽器を配置し、次の音階やパターンを患者さんが予測することで、左側の空間に気づき、注意が向くように促します。
低音のドから高音のドまで、ボタンを押すと音が鳴るデスクベル。
音ごとに別々になっている木琴。訓練に適切な位置に配置できます。
音楽を用いた注意記憶訓練
聴覚的な注意、視覚的な注意をもって音を覚える訓練です。患者さんが知っているメロディーを模倣演奏する練習から始めます。
感覚運動領域
リズムによる聴覚刺激(Rhythmic Auditory Stimulation = RAS)
音楽に合わせて歩行練習などを行い、動作パターンを安定させる訓練です。
患者さんが理学療法士と歩行訓練を行う際に、音楽療法士がメトロノームや患者さんの好きな音楽のリズムを用います。リズムや音楽が運動合図となり、患者さんの歩行リズムを調整し、動作パターンを安定させることを目指します。好きな音楽を用いるため、リハビリへのモチベーションを引き出せる効果も期待できます。
最終的には、音楽のない場面でもよりスムーズに歩行できるよう動作を獲得することが目的です。
パターン的感覚強化(Patterned Sensory Enhancement = PSE)
音楽のパターン(速度、強度、音階など)を合図として、動作のパターン(速度、強度、運動範囲など)を誘導する訓練です。この理論を用いて、当院では病棟でのラジオ体操・ミュートレ・ミュートレダンス(後述)を行っています。
治療的楽器演奏(Therapeutic Instrumental Music Performance = TIMP)
楽器の演奏を通して運動機能の改善を図る訓練です。座位バランス・立位バランス・麻痺側の上肢訓練として行っています。
言語・発話領域
メロディック・イントネーション・セラピー(Melodic Intonation Therapy = MIT)
運動性失語症の方に対して、日常で用いる単語にメロディとリズムをつけ、
発話を促す訓練です。
一般的に言語機能を司るのは左脳、歌唱機能を司るのは右脳だと言われています。MITは障害されていない右脳の歌唱機能を用いることで、左脳の言語機能の働きを助け、発話を促します。
音楽的発話刺激訓練(Music Stimulation Therapy = MUSTIM)
全失語症の方に対し、患者さんが知っている歌で、発声を促すための訓練です。
音楽療法を取り入れた活動
当院では、音楽療法を取り入れたさまざまな活動を行っています。
ラジオ体操(病棟)
皆さんにもおなじみのラジオ体操を行っています。音楽療法士がその日の参加者に合わせて伴奏の速度を調整し、他のスタッフもサポートします。運動を習慣化し、生活のリズムを整える効果が期待できます。知っているラジオ体操の音楽に合わせて運動すると、体が動きやすいのも特徴です。
ラジオ体操の後には「今日の一曲」というコーナーを設け、音楽療法士の伴奏で季節の歌や患者さんからのリクエスト曲を一緒に歌います。
- 日時
- 週5日 9:45~10:05
※2021年2月より、各病棟ごとに実施。(週1~2回)
- 場所
- 本館1階デイルームor西館2階デイルームor本2階デイルーム
- 対象者
- 入院患者さん(希望者)
カラオケ歌会(病棟)
入院されている患者さん・ご家族の皆さんで、カラオケが好きな人、歌いたい人、聞きたい人を対象に行っています。音楽療法士が、曲選びや、対話をつなげるサポートを行ないます。
これは、覚醒・注意を持続する訓練になり、集団の輪に参加し他者と交流するという社会的活動の訓練にもなります。カラオケ歌会で知り合ったことがきっかけでリハビリ訓練中に声をかけ合うようになったなど、患者さんのコミュニケーションの輪も広がっています。
- 日時
- 毎週日曜日 13:00~13:40
※2021年2月より、一時休止しております。
- 場所
- 集団言語室
- 対象者
- 入院患者さん・ご家族の皆さん(希望者)
夕べの歌会(病棟)
リクエスト・季節に合ったテーマで、歌唱活動を行います。
- 日時
- 毎週日曜日 16:00~16:30
※2021年2月より、一時休止しております。
- 場所
- 本館1階デイルーム
- 対象者
- 自由参加
院内コンサート(病棟・花の丘)
院内での社会参加につなげるため、患者さん・利用者さんによるコンサートを企画し、病棟の患者さん・ご家族のみなさんに披露するイベントを年2回行います。これまでに、ギター、ハーモニカ、ユーフォニアム、トランペット、オーボエ、フルートなどの楽器を入院患者さん・利用者さん・退院された患者さんが練習し、患者さん・利用者さんどうしや、音楽療法士のピアノやクラリネットとコラボレーションするなどしてきました。音楽を通じた「交流の場」づくりの一環となっています。
ミュートレ(短時間通所リハビリ)
ミュートレとは、ミュージック&トレーニングの略で、ストレッチ体操に音楽療法を取り入れた運動のことです。音楽に合わせて運動を行うことで、スムーズに体を動かすことができます。これは、音楽によって動作のタイミングを予測し、筋肉が実際より早く動き始めるため、動作に遅れがなくぎこちなさがなくなるためと考えられています。また、好きな音楽を聴きながらの運動は、α波の分泌を促し、安静・リラックス効果も期待できます。トレーナーと音楽療法士の息もピッタリで、参加者の皆さんはとても活発に、歌声や靴音を響かせながら体操を楽しんでおられます。最終週はドラムサークルの活動もあります。
- 日時
- 隔月の水曜日or金曜日 10:30~11:10
(短時間通所リハビリの中で行います)
- 場所
- ウィルフィットネス
- 対象者
- 短時間通所リハビリのご利用者さん(希望者)
当院の音楽療法についてのお問合せは、ホームページのお問合せフォームから送信してください。