チームと規律

ごあいさつ

西広島リハビリテーション病院
病院長
岡本 隆嗣
はじめまして!このブログは患者さん、ご家族の方、一般の方、そして職員にも、 当病院のことをもっと身近に感じていただきたいという思いで作りました。 日々の出来事の中で私が思ったことをつづっていきたいと思います。
我々医療者のチームは、多くの専門(学問)分野にまたがります。医療における多職種チームは、「いくつかの異なる学問分野にまたがる」という意味で、“inter-disciplinary”(学際的)チームと呼ばれます。またそのまたがり方によって“multi- disciplinary”チーム、“trans-disciplinary”チームという場合もあります。
この学問分野を意味するdisciplineには、「規律」という意味があり、普段はそちらの意味でよく使われます。専門職のチームとは、「規律のあるチーム」という意味が含まれていると言って良いかもしれません。
私が大学1年生でアメリカンフットボールを始めた頃、先輩OBから、礼儀作法、時間厳守、あいさつ・返事などを何度も注意されました。ご馳走になった時、翌朝一番でお礼を言いに行かなかった時はこっぴどく叱られました。2年生になり気がつくと、同じことを下級生に注意していました。3年生になり、敵チームを数多く見るようになると、強いチームの共通点に気がつきました。それは体格・体力や技術といったものではなく、「規律が徹底している」ということでした。強いチームは、集合・離散が素早く、準備体操からキビキビしています。お互いによく声を掛け合い、あいさつや返事もしっかり出来ていました。一方弱いチームはその間逆でした。
4年生の幹部学年になると、チームの規律を守るよう、何度も注意をしました。「守るべきものが守れる」ようになると、自然にチーム(組織)のためにワーク(やるべきことが出来る)ようになり、個々のプレーの質も変わってきました。
ある有名なサッカー選手がインタビューで、チームについて次のように答えていました。
「チームには、ルールと規律が絶対に必要だ。なぜなら、責任感が、すごく強い選手もいるし、そうでないメンバーもいるからだ。妥協をしているメンバーに厳しく接する仲間がいなければ、チーム内で必ず不協和音が生じる。ある選手は、いつも時間前のトレーニングに来るのに、他の選手は、遅れてやって来る。その状況は、サッカーをする以前にチームとして価値がないと言わざるを得ない。それが以前のチームでは、起こっていたが、今は違う。全員がプロの集団として、自覚を持って行動している。」
「規律」というとルールで縛られ、メンバーの自立を阻害するようなイメージがありますが、実際には規律が乱れている組織からは、自立したメンバーは育ちません。V9時代の巨人、黄金時代の西武など、強さが継続するチームには、厳しい規律があり、そこから本当の意味で自立したメンバーが育ち、指導者として活躍しました。
上手な人が集まれば勝てるとは限りません。これはスポーツに限ったことではなく様々な組織に言えることでしょう。規律があるから、個々が役割を確実に果たし、そしてチームとして機能する。それが、当たり前のことが当たり前に出来る、つまり組織の質向上につながるのではないでしょうか。
追伸:
地元のプロサッカークラブ、サンフレッチェ広島がチャンピオンシップ(CS)を勝ち抜き、見事3度目のJ1王者に輝きました。サンフレッチェはチームとして「守るべきこと・やるべきこと」を選手が理解し、各々の役割が明確でした。ケガや出場停止でメンバーが入れ替わっても、一年間質の高いサッカーを展開し、Jリーグで最も規律がとれたチームと評されました。サンフレッチェが以前CSに出場したのは1994年。その時のバクスター監督も規律を重んじた監督でした。
スーパースターがいなくても総合力で勝ち続けられるチーム。我々もそんなチームを目指したいと思います。