初心忘れるべからず[2]

ごあいさつ

西広島リハビリテーション病院
病院長
岡本 隆嗣
はじめまして!このブログは患者さん、ご家族の方、一般の方、そして職員にも、 当病院のことをもっと身近に感じていただきたいという思いで作りました。 日々の出来事の中で私が思ったことをつづっていきたいと思います。
前回、私が最初に受け持った患者さんについてお話しした続きになります。
その後リハビリは順調に進み、杖と装具を使い、ご自分で何とか歩けるまで回復されました。ようやく家に帰ることが見えてきた頃、家屋調査(退院後の生活を想定し、住宅改修について検討するため、スタッフがご自宅に伺うこと)に同行しました。家の中の移動は、杖と装具で何とかできたのですが、アトリエが半地下にあり、そこにいくのに階段を数段昇り降りしなければなりませんでした。さらにアトリエには描きかけの絵がたくさんありましたが、どれも木枠にピンと張られたキャンバスに描かれていました。

歩くことだけでなく、身の回りのことも何とかできるようになり、患者さんはきっと回復に喜んでいるだろうと私は勝手に思っていましたが、ご本人の希望はそんなレベルではないことに、その時初めて気がつきました。聞くと、キャンバスも自分で張っていた、ということでした。「片手で張るのは難しいね」と悲しそうな表情で言われました。退院までの間、作業療法の時間、キャンバスを張る練習をしました。

 

私はこの患者さんから、いろいろな事を学びました。まず患者さんのニーズは、単に機能が向上することや自立することではなく、生活や仕事、趣味の中でどのようにしたいのか、それを上手く聞き出さなければリハビリの内容・方向を間違ってしまう事。そのためには、患者さんの話だけではなく、実際の生活を知ることや見に行く事がとても大切です。また「このために良くなりたい」という具体的な目標を持ってもらう事が大切である事。我々は患者さんの目をどこに向けてもらうのかを考える必要があるのでしょう。
ご自宅へ戻られてからのことは、次回お話ししたいと思います。