失敗から学ぶ

ごあいさつ

西広島リハビリテーション病院
病院長
岡本 隆嗣
はじめまして!このブログは患者さん、ご家族の方、一般の方、そして職員にも、 当病院のことをもっと身近に感じていただきたいという思いで作りました。 日々の出来事の中で私が思ったことをつづっていきたいと思います。
10月に入り感染の波が落ち着いてきました。広島はこの1週間、毎日の感染者数は1桁が続いており、人々の外出や移動が少しずつ増えてきているようです。といっても医療者は油断できませんので、感染対策のため出張や飲み会は私自身しばらくご無沙汰しています。
最近では賛否両論あるようですが、私の世代はよく飲みニケーションを行っていました。働き始めた頃は、仕事帰りによく上司に連れて行ってもらいました。そこでは数え切れないほどたくさんの話を聞かせてもらい、耳学問として学ぶことが多くありました。もう20年近く前のことなので、ほとんどの話の詳細は思い出せませんが、そのときに聞いた上司の「失敗談」だけは鮮明に覚えています。
人の失敗談は強く印象に残り、「同じ失敗をしてはいけない」と感じ、学ぶ必要性の認識が生まれます。人は失敗を経験すると、悔しさ、悲しさ、恥ずかしさなど、様々な感情が湧いてきて、その時の感情も一緒に記憶されるからでしょう。
医療の現場には医療行為や薬、転倒、誤嚥・窒息など間違ったら命に関わるようなことが多く、これらの失敗は許されません。適応や禁忌、マニュアルが厳重に整備され、学生時代も禁忌薬を習った覚えがあります。
一方で日常的に行われる情報や目標の共有、患者さん・ご家族に対する対応、地域との連携などの中で、「こうしておけばよかった」という出来事が多く見受けられます。これらは命に関わることではないものの、結果的に患者さん・ご家族にご迷惑や不愉快な思いをさせてしまいます。その時は再発防止のための対策が行われますが、時間とともに風化してしまい、なぜこのようなマニュアルやシステムになっているのか、といういちばん大事なことが後世にうまく伝わらないことが多くあります。
先日、「リハビリナース」という雑誌の増刊号の編集に関わる機会がありました。読者が一番勉強になるのは何か?ということを検討していた時に、冒頭に述べた上司の失敗談を思い出しました。このような失敗事例は決して誇れるものではないため、通常は外部に発表されることはありません。今回の特集ではいくつかの施設にお願いし、過去の自施設の事例を振り返って頂き、「どうして失敗したのか、どんな事例だったのか?」「その後どのような対策を行ったのか?」などの読者が一番知りたい部分を中心に書いて頂きました。
今月発売され(2021年10月1日発刊)、大変好評を頂いているようです。どの施設でも起こりうる典型事例ですが、失敗例を単なる失敗談として終わらせず、組織で課題を整理し、どの施設もその後の取り組みにつながっているのはさすがだと思いました。
失敗はそのままにしておくと単なる失敗に過ぎませんが、失敗についてきちんと知り、過去の失敗を活かせるようになれば、「失敗は成功の母」になります。そういう意味で本書は学びの宝庫です。昔私の上司が語ってくれたように、過去の自分の失敗を振り返り、執筆していただいた著者ならびに施設の皆様に感謝申し上げます。きっと読者の皆さんの記憶に残り、次への成功に活かしていただけることでしょう。