システムで戦う

ごあいさつ

西広島リハビリテーション病院
病院長
岡本 隆嗣
はじめまして!このブログは患者さん、ご家族の方、一般の方、そして職員にも、 当病院のことをもっと身近に感じていただきたいという思いで作りました。 日々の出来事の中で私が思ったことをつづっていきたいと思います。
「好きな歴史上の人物は?」と聞かれた時、多くの人が名を挙げる一人は間違いなく織田信長でしょう。今年2月まで放送されていたNHK大河ドラマ「麒麟がくる」では、純粋さや弱さを持ち合わせた人間らしい武将として、新たな信長像が描かれていました。
 織田信長の代表的な戦の1つに、1575年6月の長篠の戦いがあります。この戦は当時伝わったばかりの鉄砲技術を導入した織田軍が、日本最強と謳われた武田の騎馬軍団を壊滅させた歴史的合戦といわれています。それまで1対1の技量で勝負していた合戦に、火縄銃の三段撃ちという新たなシステムを取り入れました。この戦に勝利した信長は天下統一の道を突き進み、一方の武田家は衰退していきます。また信長は兵農分離をすることで、収穫などの季節を気にせず、365日合戦ができる体制をいち早く整えました。織田軍のシステムは、やがて全国の他の武将にも広がっていきました。
それからちょうど400年後。長野県の佐久病院で、一人の青年医師が地域医療とリハビリテーションに出会いました。それから10年あまりリハビリの勉強を重ね、その後高知県でリハビリ医療に改革を起こします。付添看護を廃止し、しっかりとした看護体制を築き、「良いリハビリテーション医療にはたくさんのマンパワーが必要」と、多くのリハビリの療法士とMSW(医療ソーシャルワーカー)などたくさんの専門スタッフを配置したリハビリ専門病棟を立ち上げます。この「個人の技量だけに頼らず生活の自立支援を行うためのシステム」は、2000年に回復期リハビリ病棟として制度化され、その後全国に広がりました。現在日本全体で9万床を超え、365日リハビリができる体制が当たり前になりました。
このように、回復期リハビリ病棟の設立と普及に長年ご尽力された石川誠先生が、大変残念なことに先月お亡くなりになりました。石川先生がリハビリ医療に導入したのは、特殊な術式や先進的な機械などではありません。システムとスタッフの情熱によって患者さんを良くできることを長年実践し、それを証明してこられました。休むことなく全国を飛び回って普及のための講演を続け、そのおかげで全国にこのシステムが根付きました。今では病院と地域医療を結ぶ、各地に無くてはならない存在になっています。お隣の韓国でも、この回復期リハビリのシステムを参考にした病棟がスタートしたそうです。
先週リハビリの全国学会(京都)が現地とオンラインのハイブリッドで開催され、回復期リハビリ関連も数多く発表されていました。今回私は「回復期リハビリ病棟におけるチーム医療」という教育講演を行いましたが、その内容は石川先生やその教えを受けた全国の多くの病院から学んだ「システムで良くする」ということがベースになっています。
 いつも石川先生は、「リハビリ医療を発展させていくためには、一にも二にもスタッフの教育が大事だ」と言われていました。我々の使命は多くの若い仲間を育て、石川先生をはじめとした先人達の志を引き継ぎ、実践し続けていくことでしょう。心よりご冥福をお祈りいたします。