おもてなしの心(2)

ごあいさつ

西広島リハビリテーション病院
病院長
岡本 隆嗣
はじめまして!このブログは患者さん、ご家族の方、一般の方、そして職員にも、 当病院のことをもっと身近に感じていただきたいという思いで作りました。 日々の出来事の中で私が思ったことをつづっていきたいと思います。
前回に引き続き、「おもてなし」の話をしたいと思います。
 「おもてなし」を漢字で表現すると「持ってなす」、つまり目的を伴った行為を指し、「心をこめて客の世話をする、饗応(きょうおう)する、馳走(ちそう)する」(大辞泉)と書いてあります。日本独自の文化で、厳密には西洋のホスピタリティ(hospitality)とは違うと説明してあるものも多いですが、いずれにせよ「心のこもった待遇」というのは世界共通のようです。
当院では、退院した患者さんにアンケートを行っています。7月のアンケートでは「玄関や廊下ですれ違う時に、どなたも常に先に気持ち良い挨拶をしてくれた」だけでなく、「家に帰った後のことを親身になって考えてくれた」、「素晴らしいホスピタリティで本人・家族の気持ちに寄り添ってくれて感謝です」、「患者さんに思いやりのある言葉かけで感動しました」など、たくさんのお褒めの言葉をもらいました。
 また8月のアンケートでは、「私の会社の社員を貴院へ送り込んで研修させたいと思いました。現状に至る迄のご苦労を直接お聞きしたいと感じます(50代・会社員、家族)」とまで書いて頂きました。会社で社員教育に苦労されている方だと思いますが、当法人の努力を評価して頂き、身の引き締まる思いがしました。
以前働いていた病院で、すごく丁寧な言葉遣いをする看護師さんがおられました。さわやかな感じがする方で、とても接遇が良い方だな、とひそかに尊敬していました。ある日、夕方の回診中に急に胸が痛くなった患者さんがおられました。私は急いでスタッフステーションに戻り、心電図を用意してもらおうとその方にお願いしました。すると「もう勤務時間が過ぎているので他の人に頼んで下さい」と言われました。緊急時に予想外の返答だったため大変驚き、気がつくと研修医であることも忘れ、その方に(ここには書けないような言葉で)怒鳴り返してしまいました。幸いその患者さんに大きな異常はありませんでしたが、その後病棟で問題視され、私の上司には「お前の気持ちも分かるけど、勤務時間のことも考えなきゃいけない」とたしなめられました。
その後、その看護師さんがどんなに丁寧な言葉遣いで患者さんに接していても、私には良い接遇だとは思えませんでした。「心」がこもっていないように感じられたからだと思います。
挨拶や言葉遣いは形式的に行うことはできますが、一番大事なのはそこに「気持ちがこもっているか」どうかです。皆さんもお店で接客される時に一度や二度は心がこもっていないと感じた接遇を受けたことがあるでしょう。
我々の仕事はホテルや旅館のサービスとは違い、相手に合わせてしたいようにしてもらうのが良いとはいえません。その人の退院後の生活を考えると、リハビリがしんどくても頑張ってもらう、食欲が出ない方にも食べてもらう、などが必要な場合があります。また集団生活であるため、時には周りに大声が出る方がいても我慢してもらうことや、「自分だけこうしてくれ」という要望を聞くわけにはいかないこともあります。
 これからも職員一同、「おもてなし」の意味を履き違えず、「心」をこめて頑張りたいと思います。