ガラパゴス化

ごあいさつ

西広島リハビリテーション病院
病院長
岡本 隆嗣
はじめまして!このブログは患者さん、ご家族の方、一般の方、そして職員にも、 当病院のことをもっと身近に感じていただきたいという思いで作りました。 日々の出来事の中で私が思ったことをつづっていきたいと思います。
かつて日本の携帯電話は世界一の高機能を誇っていましたが、日本市場で独自の進化を遂げたため、世界標準からかけ離れ、世界市場のシェアを失いました。進化論になぞらえ「ガラパゴス現象」と呼ばれますが、これには「孤立した環境で進化すると、外部との互換性を失い孤立して取り残されるだけでなく、競争力を失い最終的に外部の適応力の高い種に淘汰される危険に陥る」という警句が含まれているそうです。

数年前、嚥下(飲み込み)のリハビリで有名な病院を見学しました。リハビリの技術や質が高く、いろいろ勉強になることが多かったのですが、何より一番驚いたのは、「次に行く病院・施設で提供されている食事や、介助するスタッフの情報を全例把握し、そのレベルに合わせリハビリのゴール(目標)を変えている」、ということでした。

リハビリの病院では、リハビリに特化しているからこそ、専門性や技術を高め、細かい環境設定や道具、介助技術にもこだわります。またそれができるだけの経験豊富な職員が多く揃っています。しかし患者さんは、最終的には退院して自分たちの手を離れます。一方的にリハビリ病院での方法を伝え、後はそちらで考えて下さい、という態度では、「あそこだから出来る方法だけど、現実的には…」と言われ、リハビリ病院は地域から孤立し、どんどん「ガラパゴス化」していくでしょう。
その病院では患者さんの能力を高めることだけでなく、後のことまで考えてリハビリを進めていました。自分たちのやり方を相手に一方的に伝えるのではなく、相手に合わせた方法を考えながら全例徹底して行っている姿勢に、感銘を受けました。
「誤嚥(食べ物が誤って気管内に入ってしまう事)のリスクがあるので、食事はベッド上60度の角度にして、ペースト食を介助で食べさせて下さい」、などはリハビリの病院ではごく普通に行っていることです。退院後の自宅や病院・施設では出来るでしょうか?
しかし、出来ないと決めつける必要もありません。実際に自宅や施設で、こちらが驚くような介助技術を発揮し、リハビリを続けておられる場合もあります。
地域から必要とされるリハビリ病院になるためには、退院後の介助を担う家族や職員さんと、「リハビリ効果が高く、現実的に行うことが出来る方法」を一緒に頭を悩ましながら考えることが大切です。