激震

ごあいさつ

西広島リハビリテーション病院
病院長
岡本 隆嗣
はじめまして!このブログは患者さん、ご家族の方、一般の方、そして職員にも、 当病院のことをもっと身近に感じていただきたいという思いで作りました。 日々の出来事の中で私が思ったことをつづっていきたいと思います。

私たちは「診療報酬」という制度に基づいて医療を行っています。診療報酬とは、病院・診療所で行う、医療行為・検査・外来診療などの「基準と料金」を決めているものです。これは2年ごとに改定されるため、同じことをやっていても、2年ごとに基準や料金が変わるということになります。来月が改定の時期に当たりますので、今の時期はどの医療機関も対応に大慌てです。

現在の医療は、治療を行う「急性期」、治療が終わった後のリハビリを行う「回復期」、そして療養のための「維持期(生活期)」に分かれています。先月の中旬に発表された改定の内容は、医療の概念が大きく変わる、と評され、特に急性期には「激震」が走ったと言われています。
診療報酬の基準は、「重症者への対応」「看護師の割合」「入院期間の短さ」「改善率」などを評価します。今回の改定では、「重症者」「入院期間」については定義が変更になり、また、回復期だけにあった「在宅復帰率」がどの段階にも適用され、患者さんをどれだけ在宅に帰せるかということも重要になります。それらのことにより、医療機関に求められるハードルがぐんとあがることになります。つまり、病院と名のつくところはどこでも、より重症な患者さんを治療し、入院期間を短くし、そしてより多くの患者さんを「在宅復帰」させなさい、ということになるわけです。特に急性期病院にとっては要件が非常に厳しいものとなりました。
この背景には、現在日本が直面している「少子・高齢化」と、それにそぐわない歪な病床構造があります。高度な治療を行う急性期と、一般の治療を行う急性期を合わせた病床数が、それぞれ回復期の病床数の約10倍・7.5倍もあります。今後は高齢化に伴い、慢性疾患が増えるので(院長ブログ2013年10月参照)、高齢化のピークである10年後までに、国は高度な治療を行う急性期を今の半分程度に減らし、一般急性期やその後を担う回復期を充実させる意向です。今回の改定はそのために必要な「改革」と言えます。
今回私たちは、急性期の変化のあおりを受けることになりますが、次回2年後の改定では、回復期に「直接」激震が走るでしょう。日本の高齢化は、かつて世界が経験したことのないスピードですので、それに伴う改定も想像を超えるものでした。未来は今の延長線上にないことを痛感させられました。急速に変わる医療に対応する際、一番のバリアは私たちの頭です。大変なのはどこの医療機関も同じです。その中でより良い医療が提供できるよう、「意識を変え」、「質を高め」、「スピードを上げ」てがんばらねばなりません。さらに、「地域に退院された患者さんのフォロー」を、他の機関と連携しつつ丁寧にやることを忘れないようにしたいと思います。