いい湯だな♨(1)

ごあいさつ

西広島リハビリテーション病院
病院長
岡本 隆嗣
はじめまして!このブログは患者さん、ご家族の方、一般の方、そして職員にも、 当病院のことをもっと身近に感じていただきたいという思いで作りました。 日々の出来事の中で私が思ったことをつづっていきたいと思います。

 来月からコロナウイルス感染症の法律上の分類が、インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられます。扱いは変わりますが、ウイルスの病原性が変わるわけではありません。そのため病院・施設における感染対応は、引き続き継続する必要があります。引き続き、入館する際にはマスクの着用をお願い致しますので、ご協力のほどよろしくお願いします。

 

 コロナ禍の対応で困ったことの1つに「入浴」があります。クラスター感染が起きた病棟では、それ以上感染が拡がらないように、食事・口腔ケア、トイレ介助など、防護服を着てフェイスシールドを装着した職員が、感染に気を付けながら自室やデイルームで実施しました。しかし入浴については、病棟に家庭用浴槽しかありません。普段は機械浴槽やリフト式浴槽を使用しておられる方もすべて病棟で介助をしながら行いました。防護服やフェイスシールドを装着して、狭い家庭用浴槽で行う入浴は困難を極めましたが、「とてもさっぱりして気持ちよかった。大変なのにありがとう。」とこちらをねぎらってくれる患者さんに我々も救われました。

 またご自宅で療養された患者さんやご家族からも、「とにかく入浴が困った」という話を聞きました。熱などの症状が出ているときは、清拭(身体を拭くこと)で対応されますが、熱が下がり元気が出てくると、お風呂でさっぱりしたくなります。普段からご自宅で入浴されている方は良いのですが、いつもデイケア・デイサービスなどの外部施設で入浴されている方は、ある程度ご自身で動ける方であっても、いざ行おうとすると難しいものです。「時々でも自宅で練習しておくように、訪問リハビリの方が勧めてくれた理由がよく分かった。」という声をたくさん聞きました。

 

 患者さんが日常生活で行う身の回りの動作の中で、入浴というのは階段や屋外歩行と並んで最も難しい部類に入ります。お風呂場への移動、洗体、浴槽に入る/出る、脱衣場に移動する、身体を拭いて服を着る動作など、杖や装具を使わず自力で、またご家族が介助するにしても濡れた身体を滑らないように支えながら、となると、一気に難易度が上がります。そのため、実際の退院調整になると、安全性や介護負担の観点から「お風呂はデイサービス・デイケアで」という計画が多くなります。しかしコロナ感染だけでなく、年末年始などサービスが利用できない時も考えて、ご自宅で入浴できるようにしておくことは大事だと感じました。

病棟の家庭用浴槽は、自宅生活に向けた訓練として使われることが多いのですが、その一部の動作だけでも、病棟入院中から経験しておくと、家に帰った後に役に立つのではないかと思います。また入院中に一生懸命練習した動作であっても、家に帰ってやらなくなると出来なくなってしまいますので、退院後の訪問や通所リハビリと連携し、長期的に練習をしていくことが必要なのではないでしょうか。

 

日本人は入浴を好む文化を持っています。身体を清潔に保つだけでなく、一日の疲れを癒やし、リラックスする場としても、生活の中で浴槽に浸かる時間はとても大事です。難しい動作ですが、何とか時々でも家で入浴を楽しめるようにしてあげたいものです。