“目標”と”方針”

ごあいさつ

西広島リハビリテーション病院
病院長
岡本 隆嗣
はじめまして!このブログは患者さん、ご家族の方、一般の方、そして職員にも、 当病院のことをもっと身近に感じていただきたいという思いで作りました。 日々の出来事の中で私が思ったことをつづっていきたいと思います。
少し前の話ですが、他のリハビリ病院の部長さんに、リハビリの「目標」と「方針」の違いについて、講義をしてもらったことがあります。我々はリハビリを行うときには必ず目標を立てますが、「目標がいつの間にか方針になっていませんか?」という内容でした。
例えば「足を早くする」というのは、「~のようにしたい」と願望も含めて方向性を示すため、「方針」になります。しかし、どのくらい足が早くなれば良いのか、どのくらいの期間でそれをクリアすれば達成と言えるのか、その到達レベルは曖昧です。一方、「100mを10秒で走る」というのは具体的で測定可能な内容ですので、これは「目標」と言えます。
入院中の患者さんで言うと、「自宅復帰」というリハビリの進む方向は「方針」です。3ヵ月後に自宅復帰するために、「自宅のベッドからトイレまでの5mを自分で歩けるようになる」というのはある1つの到達点を表しておりこれが「目標」になります。目標とは向きと大きさを持つ、すなわち数学で言うところの「ベクトル」のようなものです。
入院中の患者さんは入院期間が設定され、家に帰るという大きな方針がありますので、自ずと目標は設定しやすくなります。一方で、自宅に帰った後には「野球観戦に行く」、「趣味活動を行う」、「自主トレを続ける」、「自宅生活が継続できる」、など挙がることが多いのですが、これらは全て「~したい」という方針と言えます。期間の制限が無い自宅生活では、気をつけないと目標と方針が混在しやすくなります。リハビリで大切なのは、それらを行うためにどのくらいの期間でどういう能力を身につけるべきか、定期的に具体的な「目標」を設定しながら、患者さん・ご家族と一緒にそれに向けて進めて行くことです。
先日、サッカー日本代表が来年のロシアワールドカップの出場を決めました。思い返せば「日本のサッカーを強くする」という「方針」を掲げ1993年にJリーグがスタートし、ドーハの悲劇、ジョホールバルの歓喜を経て、ワールドカップでは常連の出場国になり、ベスト16入りを果たすまでに成長しました。
「2050年までにワールドカップを日本で開催し、日本代表はその大会の優勝チームとなる」―。これは日本サッカー協会の「2005年宣言」で掲げられた、壮大なる日本の「目標」です。来年を含め、2050年までにあと9回ワールドカップに出場するチャンスがあります。この25年の進歩を考えると、それは単なる方針や夢物語ではなく、到達可能な現実の「目標」と言えます。
来年のワールドカップを楽しみに、我々も自分の目標に向かって頑張りましょう。
オーレ!ニッポン。