挑戦って、いいもんだ
ごあいさつ

病院長
総合電機メーカーのソニーと自動車メーカーのホンダは、常に新しい挑戦を続けてきた歴史と、自由闊達な企業風土を持つ、日本を代表する企業というイメージがあります。どちらも戦後の小さなモノづくり企業から出発し、グローバル企業へと成長を遂げました。
ソニーは世界で最も売れたゲーム機「PlayStation」を生み出し、今年大ヒットした映画「鬼滅の刃」もソニーグループの作品です。一方のホンダは、世界で最も売れている小型ジェット機「HondaJet」を製造しています。どちらの企業も、未経験の分野にも果敢に挑み、時間をかけて開発を成功させてきました。
私たちの法人は2010年からホンダとともに、「歩行支援ロボット」の開発や臨床応用に向けた共同研究を行ってきました。その製品には、人型ロボット「ASIMO」の研究開発で培われた技術も活かされていました。残念ながら2023年末に製品の管轄は他社へ移りましたが、ホンダの担当の皆さんと過ごした時間は、我々にとってかけがえのないものでした。
当時、ホンダにとって医療分野への参入は初めてで、病院組織の仕組みや考え方の1つひとつに驚かれていました。一方、私たちも“異業種”の方々とこれほど長く一緒に仕事をするのは初めてで、常に刺激があり、とても新鮮でした。私は特に、自動車や二輪車以外の話を聞きたくて、懇親の席ではいつも質問攻めにしていました。
ホンダが小型ジェット機を作っていることは新聞記事で知っていましたが、「お米を作っている」という話には驚きました。ホンダは遺伝子研究や品種改良に取り組んでいるようで、「科学技術」と真摯に向き合ってきた企業風土が感じられるエピソードでした。
しかし、歩行支援ロボットや小型ジェット、芝刈り機、船外機、配送ロボットなどは、「モビリティ」の会社と考えれば理解できましたが、お米は???でした。その理由を尋ねると、「稲は世界で約半数の人々の主食であり、収穫量を増やすことが食糧問題の解決につながるから」というものでした。説明にまだ納得しきれない私に、少しお酒の入った担当者が言いました。
「結局は、本田宗一郎のDNAなんですよ。」人間は刺激されないと発展しない。困った時、苦しい時の知恵が尊い。発明する条件で一番いいのが、苦しむことを経験することなんだ。苦しめば苦しむほど、人から見ればわずかな発明でも、自分にはどれだけの栄誉かわからない。栄誉があって、苦しみがないということは絶対ありえない。この二つの同居人を片方だけ追っ払って、上澄みだけとろうなんてできない。失敗もいい。もし、失敗もせず問題を解決した人と、十回失敗した人の時間が同じなら、十回失敗した人をとる。同じ時間なら失敗した方が苦しんでいる。それが根性となり、人生の飛躍の土台となる。少しずつでも良い。日々前進して欲しい。それが半年、一年と経つと大きな差となって現れるはずだ。移り行く時代の中で、停滞は相対的には退歩である。
稲の研究は本業とは全く関係のない分野ですが、本田宗一郎亡き後も精神が企業に根付いていました。「挑戦する」ことを恐れず、未知の領域に踏み出し、失敗を糧に成長する姿勢が、脈々と受け継がれていることに感心しました。時代や技術が変わっても、挑戦を続けるための基盤としての“DNA”が後世に継承されていました。
2021年のF1最終戦の決勝レース当日に、2015年の再挑戦から7年間の戦いを終えるホンダが“ホンダらしい”全面広告を出しました。
負けるととにかく悔しくて、勝つととにかく嬉しくて、そんなぜんぶに本気だった7年間。HONDAのエンジンを動かし続けたのは、世界中の人々の想いや声援だった。その感謝と思い出を胸に、これからもHONDAは挑戦を続けていく。勝っても、負けても、どんな挑戦も素晴らしい。
そのことを、大きな声で、今なら言える。
「挑戦って、いいもんだ。」来月11月4日は当法人の開業39周年。いよいよ40年目に突入します。我々は創業以来の理念にあるように、「明日を拓く」ための飽くなきチャレンジを続け、これからの時代を担う職員に、その精神をしっかりと継承していきたいと思います。
職員一同、力を合わせて頑張りますので、皆さんどうぞよろしくお願いします!