災害支援と地域包括ケア

ごあいさつ

西広島リハビリテーション病院
病院長
岡本 隆嗣
はじめまして!このブログは患者さん、ご家族の方、一般の方、そして職員にも、 当病院のことをもっと身近に感じていただきたいという思いで作りました。 日々の出来事の中で私が思ったことをつづっていきたいと思います。
8月20日の未明、広島市では前日からの豪雨が原因で土石流が発生し、多くの犠牲者が出ました。当院の職員宅や入院患者さんのご自宅に被害は無く、一安心していたところ、以前私が担当していた患者さんが亡くなられたことを、報道で知りました。自宅退院後、ご家族と頑張っている様子を聞いていただけに、やりきれない気持ちになりました。
15年前の6月29日にも、当院すぐ近くで土石流が発生し、多くの犠牲者が出ました。そのことを体験している職員が少なくなっていることに危機感を感じた施設管理課長が、今年の防災研修で、「広島周辺の山は花崗岩で出来ており、滑り台の表面に土が乗っているようなものだ」と表現していたのを思い出しました。「歴史は繰り返す」ことが身に沁みました。
当院は広島県の「地域リハビリテーション広域支援センター」に指定されています。22日より県の地域包括ケア推進センターが中心となり、災害リハ支援の動きが始まりました。当院はセンターとして、27日から理学療法士(PT)・作業療法士(OT)の派遣を行っています。派遣した職員の話を聞くと、災害支援というのは、普段我々が行っている仕事の内容とよく似ていることに気付きました。
まず、被災者に必要なのは、快適な寝床、温かい食事、清潔なトイレ、そしてお風呂という生活支援です。これは回復期リハ病棟が2000年に創設された当時、「寝・食・排泄・清潔分離の環境を整えよう」としきりに言われたことと同じです。現在の入院リハでは考えられませんが、当時の患者さんはベッドの上で食事をし、そこで排泄をさせ、お風呂の代わりに身体を拭くのが常識でした。
次に、家族や仲間、帰るところを失った避難者に対して、精神ケアや心理面の支援がリハ支援活動の基本となっていることです。派遣した職員は「仕事の8割がこれだ」と言います。これも突然の病気で障害を負ってしまった患者さんのケアと同様です。
そして、行政・病院・施設・各職能団体間の連携体制を日頃から整備しておくことです。各団体バラバラの支援や個人レベルで動いても、それはボランティアの域を出ません。チームによる組織的な支援を行うためには、日頃から「顔の見える」関係作りが必要です。また行政と連携しながら動かないと、地域の他の資源が動かず、十分な生活支援が出来ません。
民生委員や地域の自治会、さらには多くのボランティアが現地で活動をしています。住まいを整備し、医療・看護・介護・リハ・保健・予防が行政を一体となり地域の生活支援を行う姿は、地域包括ケアの「自助・互助・共助・公助」(2014年7月ブログ参照)そのものです。

まだ道半ばですが、この災害支援を通じ広島の「地域力」はさらに高まるでしょう。これは突然の災害に見舞われた地域が再び立ち上がるための「リハビリテーション」です。
最後に、被災された方、そのご家族、関係者の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。