専門化と連携

ごあいさつ

西広島リハビリテーション病院
病院長
岡本 隆嗣
はじめまして!このブログは患者さん、ご家族の方、一般の方、そして職員にも、 当病院のことをもっと身近に感じていただきたいという思いで作りました。 日々の出来事の中で私が思ったことをつづっていきたいと思います。

先月の退院アンケートで、「病棟内の縦・横の連携が出来ており素晴らしい」というコメントを複数頂きました。「連携」についてのコメントでしたので、とても嬉しくなり、現場の職員に報告しました。とても喜んでくれた一方で、我々の専門技術や接遇だけではなく、職員間の「連携」についても、患者さんの目が向けられている事に、身が引き締まる思いです、と言っていました。

医師の指示のもとで、看護師だけが仕事をしていた時代には、「連携」という言葉は必要ありませんでした。その代わり看護師は、薬や点滴、体調管理、ケアだけでなく、検査やリハビリ、退院調整まで全て行っていました。他に行う人がいなかったのです。
 やがて時代は変わり、それら1つ1つの仕事が専門化されました。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、介護福祉士、社会福祉士、薬剤師、臨床検査技師、放射線技師、管理栄養士、歯科衛生士などが次々に国家資格となりました。当院では、その他に臨床心理士、音楽療法士が病棟に配属されています。多い場合は、12職種が1人の患者さんの担当となります。
専門化が進む事でスキルを磨き、それぞれの分野で深く関われるようになった一方で、多職種間の「連携」という課題が出てきました。また365日同じ体制で医療を行うようになり、担当者が休みのときは、同じ専門職がフォローに入ります。同職種間の「連携」も日々行われます。現在のリハビリ病棟では、様々な連携が必要になってきています。自分が得た情報を、タイムリーに関わる全ての人達に伝えることは至難の業です。また他の専門職がどういうスキルを持ち、どういう仕事をしているのか、十分に理解していないことも目立つようになりました。
 そういう意味で、現在のチームメンバーには、それぞれの専門性以外に、共通言語・共通知識、相互理解が必要です。そしてそれぞれが得た情報を共有すること、チームリーダーがまとめていく作業がチームの運営に必要となります(院長ブログ2012年11月)。
連携には、ポイントが2つあります。これは当院の元院長が我々に残してくれた言葉の1つです。
  1. 互いに(一歩踏み込んで)情報を共有すること

    自分が得た情報は確実に伝える事、また情報をただ待つのではなく、自分で取りにいく姿勢を持つ事。

    1. 得た情報をもとにアクションを起こすこと

連携というと、情報共有ばかりが取り上げられますが、大切なのはこちらです。どのようなアクションを起こすかが、その人の連携の能力です。またこの連携の環の中心に、患者さんや家族を引き入れるのは、そのチームの能力です。

さらに、我々の連携をバックアップしてくれる人達がいます。朝早くから食事準備をしてくれる栄養課、病棟をいつもきれいにしてくれる清掃の人達、病棟環境を整備してくれる施設管理課、事務作業や書類、情報管理をしてくれる事務職、請求業務をしてくれる医事課。彼らのバックアップが無ければ、病棟の連携だけでなく、良質な医療も出来ません。我々の専門的な仕事は、1人で成り立っている訳ではありません。自分が出来ないところ、足りないところ、居ないところで頑張ってくれている人達が必ずいます。
 連携をする上で一番大切なのは、目に見えるところ、見えないところで頑張ってくれている、他職種に対する「感謝」の気持ちではないでしょうか。