生活の目標を立てる

ごあいさつ

西広島リハビリテーション病院
病院長
岡本 隆嗣
はじめまして!このブログは患者さん、ご家族の方、一般の方、そして職員にも、 当病院のことをもっと身近に感じていただきたいという思いで作りました。 日々の出来事の中で私が思ったことをつづっていきたいと思います。
回復期リハビリの目的は、毎日リハビリをたくさん行い、身の回りの動作や移動を可能な限り自立させ、住み慣れた自宅に戻す、ということです。全国で1,000近くの病院が回復期病棟を持ち、7割程度の患者さんが自宅に帰ることができるようになりました。医療システムの重要な一部分を占めるようになった一方で、退院後の生活を想定したアプローチが不十分である、といった声を聞くことがあります。
その理由として、回復期はそれに特化した病棟を作ることで専門性を高めてきましたが、退院後の医療やリハビリに関わることが少なくなってしまったということがあります。「生活の場」に帰す仕事をしているのに、病棟の職員が直接患者さんから退院後の生活の様子を聞く機会が減ってしまったのです。これでは「やりっ放し」のリハビリになってしまいます。
当院ではその対策として、退院後の電話やアンケート、自宅訪問等で、何とか退院後の様子を知ろうと努力をしたり、ローテーションを行い、退院後のリハビリを行う部署を経験したりしています。また、退院後担当の職員と回復期担当の職員を中心に、合同勉強会を定期的に開催し、患者さんやご家族の声を交えながら、入院中のどういうリハビリが役に立ち、どういうところが足りなかったのかを検討しています。
 そしてもう1つ取り組んでいるのが、退院3ヶ月後の「生活の目標」を立てることです。今まで個別に立てているケースはありましたが、全患者さんに対して目標を設定するようにしました。
これはやってみると、中々難しいことが分かりました。入院中であれば、「トイレ動作の自立」、「杖歩行が○m可能」といったような動作に関する目標になることが多いのですが、「生活の目標」を立てるためには、その人の身体の状態だけでなく、生活歴、家族や家屋を含めた生活環境等の社会的情報を十分に把握しておかなければ立てられません。
職員の立てた退院後の目標を見ると、まだまだ入院中と変わらないような目標もありますが、「国道の横断歩道を青信号のうちに渡る」、「畑の草抜きができる」、「妻と一緒にスポーツセンターのプールを歩く」というようなその人ならではの目標を立てているケースも増えてきました。
患者さんと退院後の目標を考え、3ヵ月後にその目標がどうだったのか、一緒に話ができるようになる。そうなれば、入院中のリハビリも大きく変わってくるでしょう。退院後の患者さんの声により職員が大きく成長してくれることを楽しみにしています。