良くなった!?

ごあいさつ

西広島リハビリテーション病院
病院長
岡本 隆嗣
はじめまして!このブログは患者さん、ご家族の方、一般の方、そして職員にも、 当病院のことをもっと身近に感じていただきたいという思いで作りました。 日々の出来事の中で私が思ったことをつづっていきたいと思います。
当院では、退院した患者さんにアンケートを行っています。アンケートでは様々な意見を頂き、当院の業務改善に役立っています。お褒めの言葉を頂く事が多いですが、中にはお叱りを頂戴することもあります。
最近、とても良くなって退院されたと思っていた患者さんから、お叱りを受けることがありました。その方は、入院中にリハビリを頑張られ、杖無しでも歩けるようになり、身の回りのことも出来るようになって帰られました。我々がよく言う、「軽い麻痺の患者さん」です。ご指摘頂いた内容は、「自分の最新情報が他の職員に伝わっていない」など、「職員同士の情報の連携が悪い」、ということでした。

先日、ご本人さんからお話を伺う機会がありました。よく話を聞いてみると、不満の根本にあるのは、こちらの連携云々というよりも、自分の目標としていたレベルに改善しないという焦りなのではないか、と感じました。我々は「良くなった」と感じていましたが、ご本人さんにはまだ到底満足できるレベルではなかったのでしょう。一人で歩けるようになったからそれで十分というわけではなく、家に帰ったら家族のご飯を作るために買い物に行く必要を感じておられる患者さんもおられます。我々は、とても改善して退院されたので、患者さんご自身もきっと満足しておられるだろう、と勝手に思っていたのかもしれません。

 

我々は、患者さんの障害が改善して軽度になると、「軽度障害に改善」=「ご本人さんもある程度満足されている」と思ってしまいがちですが、果たしてそうでしょうか。患者さんのご希望は、口には出されないかもしれませんが、少なくとも「元に戻る」ということでしょう。我々は障害を持って入院して来られた患者さんの姿しか知りませんが、ご本人・ご家族のイメージは病前にあります。つまり、我々の評価の出発点と、患者さん・ご家族の評価の出発点は異なるのです。我々が「(入院して来られた時に比べて)良くなった」と思っても、患者さんにとっては「(病気の前に比べて)まだ良くなっていない」のかもしれません。
また、我々は改善のスピードも、限界もある程度予想できます。どんなに良くなっても、それは全く元通りではない事も、それを患者さん自身が乗り越えていかなければ次に行けない事も知っています。そういう事を我々が理解しているかどうかで、患者さんの思いや安心感は変わって来るのでしょう。
我々が行っている回復期リハビリの目標は、「よくなって生活 の場に帰っていただく」ことです。生活 というのは、単に歩けるかどうか、身の回りの事が自立しているかどうか、ということではありません。生活には、家族、地域、住宅、お金、生活暦、趣味、などいろいろなことが影響しています。安心した地域生活をスタートするためには、我々は「生活機能の向上」ということを真剣に考えていかなければなりません。まずは患者さんの生活に「関心を持つ」事、そして、そこから学ぶ事。これが大切だと思っています。